僕が左手で、温めてあげよう。


                  「よく、てのひらが冷たい人は心があったかいなんていうよね」
                  コーヒー2に、ミルク8の甘ったるいカフェ・オ・レを飲んでいた。


                  「それは、俺にむかって言っているのか?」
                  苦笑するように、彼は金髪の髪を揺らした。


                  「いや、このカフェ・オ・レがいい温度だから」
                  そう言って、カインの部屋はカフェみたいと笑う。


                  「じゃあ、ココはセシル専用の喫茶店だな」
                  僕専用の喫茶店、
                  と彼が言うので喫茶店のマスター姿の彼が浮かんだ。
                  どんな姿でも、似合いそうだ。と率直に思う。


                  ますます月が主役のような、濃紺の夜だった。
                  ヒトリ舞台で、月は何を思っているのだろう。


                  「セシル」
                  ふいに呼ばれた名前に、どきりとした。
                  あまりにも幻想的なかんばせがこちらを見ていたから。
                  「今度、飛竜に乗って月の周りを飛ぼう」
                  僕がきっと、月を眺めていたから彼はそういった。


                  「カイン、君は優しすぎるよ。優しさのかたまりだ」
                  君は、Kindだよ。ハイウィンド。と僕ははにかむ。


                  「セシル、俺のスペルはCだぞ?」
                  そう言って、彼はまた笑う。
                  心の奥がとろん、としてしまいそうな。


                  「あまり優しすぎるのは、酷だよ」
                  僕がそういうと、君はそうっと僕を抱きしめる。
                  ほらまた、君は僕にどこまでも優しいから。


                  「手をつなごう」




                  君の右手はつめたいから。




                  【Cain】
                    旧約聖書の創世記に記されるアダムとイブとの長子。
                    自分の献物が神に退けられたのを恨み、弟アベルを殺した。
                    ヤフー辞書より引用。