「カインのこと、嫌いだ」


                  面食らったような、彼の顔。
                  でも今はそんなことを気にせずに続ける。


                  「別れよう。もう・・疲れたんだ」
                  ため息をひとつだけ、ついてから
                  「じゃあ、ね」
                  と、別れの挨拶をつげる。


                  「・・・セシ、ル」
                  掠れた声で、彼が僕を呼び止める。
                  「今まで、迷惑かけたな。すまん」
                  悲しそうな笑みをして彼は、フッといつものように笑った。
                  「女々しいな、俺は」


                  自分から言った言葉なのに、深く傷ついた。
                  罪悪感と、彼の悲しい顔を見て。
                  どうしようもならない感情が僕を支配して
                  思わず彼に駆け寄った。


                  ◇


                  「カイン!今日、エイプリルフールだろ?」
                  今にも泣きそうな顔をして、セシルは自分に抱きついた。
                  「真に受けないでくれよ。なあ、嘘なんだ。ごめん、謝るよ、謝るから・・」
                  そんな顔、しないでくれ。と銀の髪の愛しい恋人は言う。


                  「ああ。だからお前も、そんな顔をするな」
                  胸のうちからこぼれでる笑みに、抑えがとまらなくなる。
                  「っくく、全部演技だ。セシル、すまんな」
                  ぽかーんとした顔で、彼の蒼い瞳が俺を見つめ返す。


                  「っ!!カインなんて、嫌いだ・・」
                  「俺は好きだ。セシル」


                  頬を赤く染めながら、セシルは胸に顔をうずめる。
                  それから、小さな声で、ひとことだけ。
                  「僕も、好きだけど」


                  ◇


                  「ほんと、バカップルよねえ」
                  「だな」


                  「エーッジ!」
                  元気のよさそうな緑髪の少女がぴょこぴょこと跳ねてきた。
                  「エッジって王子様みたいね!」
                  うふふ、とちいさく笑う無邪気な少女。
                  「ま、まーな!俺も一国の・・・ん?」


                  「ここにもバカがいたかしら・・」
                  ひとり、ブロンドの髪をゆらしながらローザはくすくすと笑った。